児童書が大好きなので、色々な国の日本語訳を読んで楽しんでいます。
その中から、素敵だなと思った本の紹介をしていきたいと思います。
内容や、表紙絵や挿絵のデザインについて、感じたことを書いています。
『テオの「ありがとう」ノート』は、フランスの児童文学作家、クロディーヌ・ル・グイック・プリエトの作品です。作者は坂田雪子さん、表紙絵や挿絵は小林系さんです。
この本は、生まれつき下半身と左手が動かず、車椅子で生活しているテオの心の葛藤と成長を描いた物語です。
まず第一章から、テオが「ありがとう」をいうのをやめたと決心するというエピソードに、「え、なぜ?」と引き込まれました。そのあと、家庭ではバリアフリー環境を整備できないため、施設で暮らしているテオの日常や、家族との関係、施設での友達や職員たちとの関わりについて、まるで自分もその場にいるかのような臨場感で生き生きと描かれていきます。施設での暮らしの中で、誰にも気兼ねなく自分で身の回りのことをやりたいという気持ちと、それでも誰かに手伝ってもらわなければならない時があるということの間で揺れるテオ。そんな時、「ありがとうを言わなくてはならない状況があったとしたら、それを埋め合わせるために誰かを助けて、ありがとうと言ってもらえばいいんだ。そうしたらありがとうの差し引きができるから、埋め合わせができる」と思い付きます。ありがとうをもらうために身近な人の手助けをして回るようになったテオ。はじめはただ、ありがとうの埋め合わせをしたい気持ちが大きかったけれど、色々な人の役に立って心からのお礼を言ってもらううちに、テオの心に変化が起きます。ラストシーンでのテオの姿がとてもかっこよくて、爽やかな読後感が残ります。
テオが「ありがとう」をいうのをやめた理由は、「誰かの手助けなしに生活できない自分は、他の人より多く「ありがとう」を周囲の人に言わなければならないことへの反発がありました。障がいのない弟は、こんなにたくさんのありがとうを人に言わずに生活できているのに、なぜ自分だけ?という憤りが綴られます。
こうした心のひだについてテオを一緒に思いを巡らせ、助け、助けられる関係のあり方について深く考えることができました。
表紙画や挿絵のイラストも、この本の魅力の一つです。
爽やかなブルーと白を基調とする表紙画はパッと目に飛び込んできますし、イエローのシャツを着ているテオに目線が吸い込まれます。そして、テオが見つめる先に何があるのだろうと、その先を追いたくなります。左から右にめくっていく本なので、テオが左を向いていることで自然に物語の世界に入っていくような感覚があります。表紙画のほぼ下半分が白地になっており、余白づかいもすっきりと抜けがあって爽やかさと調和しています。素晴らしいデザインだなあと、私も表紙画を描くときの参考にさせていただこうと思いました。
テオの姿を追いながら、自分にできることとできないこと、人との違い、自分がやりたいことを現実にしていくためには…そういった様々な大切なことを考えさせてくれる作品です。
どうぞ読んでみてください。

